【第3回】「虫歯って痛くないの?」
皆さんもこんな経験ありませんか?「歯医者に久しぶりに行ったら虫歯があると言われた」
虫歯に気づかなかった、虫歯になっても痛みが出ないことが多い、その理由を質問形式でお答えします。
今回の質問は、40代会社員の男性からの質問です。
この前、つめ物が取れて久しぶりに歯医者さんに行ったら、他にも虫歯が何本もあると指摘されてびっくりしました。
全然痛みを感じたことがなかったんですけどね。
なるほど。痛みがないのに虫歯があったわけですね。
そうです。そんなに虫歯ができているなんて思いませんでした。なぜ痛みを感じなかったのでしょうか?
いろいろと理由はありますが、一つずつ順番に説明させていただきます。
まず1つ目の理由は歯の構造(下の図を参照)との関係にあります。
歯は外側にエナメル質という一番硬い部分があり、その内側に少し柔らかい象牙質、中心に歯髄(神経)があります。虫歯が浅くエナメル質の表面にとどまっている場合は、全く痛みはありません。いわゆる初期の小さな虫歯は、痛みを感じることがありません。
小さい虫歯は痛みがないのはなんとなくわかります。他に理由はありますか?
はい、他にも理由があります。2つ目の理由は、進行の速さに関係があります。エナメル質を超えて象牙質まで虫歯が到達すると、徐々に痛みを感じるようになってきます。最初は、冷たい物がしみたり、噛んだときに痛みを感じることがあります。子どもや若い方は虫歯の進行が早く、痛みが出ることも多いのですが、加齢とともに虫歯の進行が遅くなるため痛みを感じにくくなってきます。また、ゆっくり虫歯が進行すると歯の中の歯髄(神経)に第二象牙質というものができて、神経が細く小さくなり虫歯からの距離が遠くなるため、痛みを感じにくくなります。
へぇー。それは知らなかったです。
ちなみに、お年寄りの方の神経はレントゲンでも小さくて細いので、確認しにくいんですよ。
ですが、治療の際は、そのまま削っても痛くないことが多いため、麻酔がいらないんですよ。
なるほど。麻酔しなければ、治療後に麻酔でしびれていないので、すぐに食事ができていいですね。何より注射しなくていいのが、うれしいです。
そうですね。痛みなく治療ができるのが楽でいいですよね。
そして3つ目の理由は、神経をとる治療(歯内療法)をしてつめ物やかぶせ物を装着した歯は、神経がないため、虫歯ができても痛みや症状が全く出ないので気づかないことが多いです。歯が欠けたり、かぶせ物が外れたり、歯と歯の間に物が詰まりやすくなって気づくことが多いですね。かぶせ物の根元(歯頚部)から虫歯になることがよくありますので、注意しないといけません。
そうですね。確かに神経を取った歯も虫歯になっていましたが、全然気づいていませんでした。
4つ目の理由は、非常に深い虫歯で神経に近い所まで削ってつめ物を装着する治療を行った後に、数ヶ月以上経過して徐々に神経が死んでしまうという場合があります。神経が死んでしまうと感覚がなくなってしまい、虫歯などができても痛みを感じることはありません。
なるほど。そういうこともあるんですね。
ちなみに、神経が死んでしまった歯はそのまま放置しておくと、歯の根っこの先で膿がたまってきて、急に歯ぐきが腫れて痛みが出てくることもありますので、早めに神経の治療をして中に薬を詰めてつめ物やかぶせ物をする必要があります。
それは自分では気づかないですよね?
そうですね。症状が出なければレントゲンを撮ってはじめて根の先の病気(根尖性歯周炎)が発見されるということになりますので、定期的なレントゲン撮影・診断を行う必要があります。
そうですか。わかりました。
このように虫歯は、痛みなどの症状が出ないことが多いため、自分では気づかないことが多いのです。痛みが出てきてから歯医者に行って治療をしても、かなり進行している場合が多いため、大きく歯を削ってかぶせ物をしたり、神経の治療になったり、場合によっては歯を抜くことにもなります。
神経の治療は、何回も治療に通わないといけないので大変ですね。ましてや歯を抜くのはもっと嫌ですね。
そうならないために、定期的に検診に来ていただくことで、初期の小さな虫歯で発見して治療を行えば、治療も少し削って詰めるだけで簡単に終わります。もちろん進行した虫歯もできるだけ早く治療してつめ物やかぶせ物を装着する治療を行えば、歯を抜かずに済みます。
やはり、早期発見・早期治療が大切です。
わかりました。これからは定期的に歯医者さんに通うようにします。
できれば3ヶ月に一度の定期的な検診と歯のクリーニング、歯石除去をおすすめします。
虫歯と歯周病の予防のために、痛みがなくても検診にご来院ください。